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- 埋伏歯と矯正治療

歯が生えてくる時期になっても出てこない場合に考えられるのは、
①先天性欠如
②骨との癒着
③隙間の不足などによる萌出障害、遅延
です。

②③のような状態で歯肉に埋まったまま、なかなか出てこない状況を「埋伏」と言います。
はじめからその永久歯が存在しない①の場合も含めて、全部の歯が写るレントゲンを撮って確認する必要があります。

特に③の状況で、骨の中で隣の歯の根と接触するような状態になると、歯根が吸収し、短くなってしまうこともありますので、それを未然に防ぐ必要があります。

最も多い埋伏歯は「親知らず」と呼ばれる第三大臼歯です。
埋まっている方向によっては一本前の第二大臼歯の歯根にぶつかり、凹みを作ったり歯根を溶かしたりすることがあります。上下とも要注意です。

次に多いのは上顎犬歯です。問題を生じるような「親知らず」は抜いてしまえばよいことが多いのですが、犬歯は歯根も長いのでできれば抜きたくない歯です。
必要ならCTも撮った上で、周囲の歯の根に接触しないよう動かして配列できれば理想的です。

生える場所さえ確保できれば、埋伏歯も引っ張り出してまっすぐに並べることができるので、隙間の検討が必要です。
また、移動中にも特別な注意が必要なのと、移動がうまく行かない場合もあるので、その後の対処も考慮する必要があります。

- 鼻気道障害と不正咬合

花粉症の時期だけではない慢性鼻炎、副鼻腔炎、咽頭扁桃肥大(アデノイド)などの鼻気道障害は、上顎前突や開咬(部分的に上下の歯が咬み合わない状態)を引き起こす原因になります。

鼻気道が狭められると、呼吸を確保する為に口呼吸になります。
口の中に空気を通すため舌は下降し、口唇は常時開き、下顎骨は後下方に転位します。
それに伴って臼歯(奥歯)が伸び出し、前歯は開咬になってきます。

また、舌が下ると上顎臼歯部の内側から舌の圧が掛からなくなるので、上顎歯列が狭まり、歯列の叢生(八重歯、乱杭歯)を生じたり、 上下歯列幅の不調和による咬合不安定、臼歯部反対咬合を招くこともあります。

根本治療は鼻気道障害を除去することですが、十歳以前に行うと、術後の安定性がよいと言われています。耳鼻科的な治療の後、矯正歯科の治療をするのが理想的です。
矯正治療の内容は、上の歯列拡大と歯の移動により咬み合わせを改善することの他、舌や口唇のトレーニングも行います。

- インプラント矯正

矯正歯科の治療においては、歯を動かすための固定源の設定が重要な要素です。
今までは、動きにくい仕掛けを作り、それを固定源として動かしたい歯を動かす、という方法が取られてきました。

上顎左右の奥歯を連結するとか、ヘッドギアで歯を後ろに押すということが代表的な例です。 しかし、これらの方法は、患者様自身の協力に依存する面があり、治療結果の確実性に欠けていました。

また、従来の固定源設定では不十分な場合もありました。
そこで出てきたのが「インプラント矯正」という術式です。
「インプラント」と呼ばれる板状あるいはネジ状の金属を骨に固定し、歯を動かすための固定源として使う方法です。

骨に固定された金属が不動の固定源となるため、ヘッドギア不要、今までの治療法では困難であった方向に歯を移動できる、 骨切りによる外科矯正が不要になる場合もあるなど、利用価値の高い治療法です。

しかし、ある程度外科的侵襲を伴いますし、安定した結果を得るには工夫が必要です。 今後発展が期待できる治療法です。

- 矯正歯科治療の意義

「自分の歯を長持ちさせるには」
〜80歳以上で20本以上自分の歯が残っている人の口の中から学ぶこと〜

日本歯科医師会は「80歳になった時20本以上の歯が残っているようにしよう」というキャンペーンを展開しています。
「8020(はちまるにいまる)運動」と言います。
その一環として、文京区歯科医師会がその目標を達成しているお年寄りの口の中を調べました。
そのデータを某歯科大学矯正学講座が分析し、興味深い知見を専門誌に発表していましたので、それを紹介します。
- 1 反対咬合がなかった。
上あごの歯の方が下あごの歯より一回り外側に出ているのが正常です。
その咬み合わせを持っていることが、多くの歯を維持するための一つの条件と考えられます。
- 2 咬合ガイドがほとんどの方に存在した。
これは顎を動かして咀嚼(そしゃく)運動をする際の上下の歯の接触が、力学的にバランスの取れた状態にあるということです。 咬合ガイドが十分でないと、一部の歯に無理な力が掛かり、脱落につながると考えられます。
- 3 かかりつけ歯科医がいて、最低一年に一度は診察を受けていた。
歯に対する関心が高く、手入れも十分されていたと解釈されます。
このように、よい咬み合わせと普段の手入れが自分の歯を長持ちさせるための重要な要素であることがわかります。
矯正歯科治療はよい咬み合わせを実現する一つの手段ですが、人工物によらず自分の歯でそれを実現するところに特徴があります。
また、矯正歯科治療中に歯に対する関心が高まる傾向があることと、歯並びがよくなると歯の清掃がしやすくなることから、自分の歯を長持ちさせることをさらにバックアップしています。

矯正歯科治療で得られるきれいな歯並びは、歯磨きがしやすく、むし歯や歯周病を予防します。また、発音もより明瞭にしてくれます。
バランスの取れた咬み合わせは、歯に無理な力をかけないので、歯を長持ちさせることになります。よくかめることは、全身の健康維持にもつながります。
そしてきれいな歯並びによって、笑顔に自信が持てるようになり、生活全体の積極性が増すことになるでしょう。

- 咬み合わせについて

- 1 「よい咬み合わせ」とは
歯科治療の目的は「よい咬み合わせ」を回復することですが、そもそも「よい咬み合わせ」とはどのようなものなのでしょう。
第一は、食物をかんで消化しやすい状態にして胃に送り込むことが十分できる、ということです。 前歯で食べ物をかみ切り、臼歯ですりつぶし、飲み込む、という一連の動作が十分かつスムーズに行われるためには、歯は綺麗に並んでいた方が、上下きちんと合いますから、都合がよいわけです。
凸凹の歯並びでは、咬み合う歯が少なくなっています。
臼歯ですりつぶす時、下あごを前後左右に動かしますが、それを邪魔する位置に歯があると、すりつぶす運動の能率が悪くなったり、歯の支持組織や顎関節に負担を強いることになります。
また、口の中の食物の移動には、舌や口の周りの筋肉が関与しています。
下あごを動かしている筋肉も含め、筋肉とそれを動かす神経が、協調してスムースに働くこともよい咬み合わせには必要です。
第二には、歯や歯肉、歯槽骨などの歯周組織だけではなく、口の周辺の筋肉、関節を痛めるような無理な力が掛からない、ということが必要です。
- 2 「よくない咬み合わせ」とは
よくない咬み合わせには、見た目の問題、機能の問題、将来的な機能の問題があります。
凸凹の歯並び(正式には叢生(そうせい))や出っ歯(上顎前突(じょうがくぜんとつ))、受け口(反対咬合(はんたいこうごう))など、見た目が気になる不正咬合があります。
一方、うまくかめない、かむと歯や歯茎を痛めるという機能上問題がある咬み合わせに、開咬、過蓋咬合(かがいこうごう)、交叉咬合(こうさこうごう)、外傷性咬合があります。
人には適応能力があるので、他の疾患と同様、理想的な状態ではなくとも、すぐに問題が生じるとは限りません。
健康者と非健康者の間のグレーゾーンにいる人は、ストレスの掛かっている状態に適応できていれば症状は出ませんが、 親知らずが生えてきて奥歯の咬み合わせが変わったり、歯周病で歯がぐらぐらしてきたり、増齢による変化も含め、状況が変化すると非健康者の方に入ってしまうわけです。
多くの人はこのグレーゾーンにいると思いますが、そのレベルが問題ですから、専門家の診察を受け、ご自分で状況を把握しておくことが肝要です。

- よくない咬み合わせ

- 1 「開咬(かいこう)」
よい咬み合わせができない、機能的な問題を持った状態の一つに「開咬」があります。これは、奥歯を咬み合わせているのに上下の前歯の間に隙間があって、咬み合っていない状態です。 まれに、横の歯(小臼歯)が咬み合っていない場合もあります。
いずれも咬み合っていない歯は機能しないので、ものをかみ切る機能が損なわれます。息がもれるので、発音に支障が出ます。 また、損なわれた機能を、主に奥歯(臼歯)が肩代わりしますので、負担加重により、咬耗(すり減り)が進んだり、動揺が生じて、寿命が短くなる歯も出てきます。
原因には、顔面骨格の不正による場合もありますが、指しゃぶり、舌の前方突出癖、長期にわたる鼻づまりによる口呼吸など、 筋肉、軟組織が関与する場合も多く、難しい治療となることも多い症状と考えられています。
- 2 「交叉咬合」
機能的に問題があり、早く治した方がよいとされる咬み合わせの一つが、「交叉咬合」です。
臼歯(奥歯)の片側が反対の咬み合わせ(上の歯が下の歯より内側に咬む)になっていて、正中線(前歯の中央の線)が上下でずれています。
放置すると、片側が良く咬めなかったり、下顔面が歪んでしまうので、成長期のうちに治療した方がよい不正咬合です。
原因は、上下歯列の幅の不調和、特に上顎歯列狭窄(じょうがくしれつきょうさく)の場合が多いようです。 咬み癖や、頬杖による下あごの変位が原因になる場合もあります。治療は、上下歯列の幅を調和させ、場合によっては、下あごの位置を中央に誘導して、左右対称の歯列、咬み合わせに持ってゆきます。
奥歯なので見つけにくい症状ですが、前歯の正中線のずれに注目し、早期発見をしていただきたいと思います。
- 3 「反対咬合」
機能的に問題があり、早く治した方がよいとされる咬み合わせに「反対咬合」があります。
下あごの前歯が上あごの前歯より前に出てしまう咬み合わせで、「受け口」とも言われる不正咬合です。
前歯で物が咬みにくい、下顎前歯(かがくぜんし)に無理な力が掛かり動揺を生じる場合がある、不明瞭な発音になる場合がある、下唇や下あごが突出した顔貌になる、という症状を伴います。
成長期には下あごの成長とともに症状が悪化するので、治療に長期間を要することも多く、治療時期の設定に苦労する不正咬合の一つです。 軽度の場合は、前歯を少し動かしたり、下あごの位置を少し変えることで症状は改善しますが、重症の場合は、抜歯したり、外科手術も併用しないと治らない場合もあります。
舌の位置や運動様式に問題があり、それが反対咬合の原因になることも多いので、その場合は、舌の機能訓練も行う方がよいでしょう。
- 4 「上顎前突」
早く治した方がよい不正咬合を順番に取り上げています。今回は、上顎前突、いわゆる「出っ歯」についてです。
上の前歯が下より約3mm前に出ていて、約3mm下の歯にかぶさっている咬み合わせが理想とされています。 上の前歯の出っ張りが7mmを越えると、前歯で物が咬み切りにくく、口が結びにくくなり、上唇が出っ張った感じになります。
ころんで前歯を折ることが多いのも特徴です。下の前歯が上の歯茎を噛んでしまう深い咬み合わせ(過蓋咬合(かがいこうごう))になることも多く、歯茎を傷めてしまいます。 また、口を結んでいないと、前歯の歯茎が乾燥し、歯肉炎を起こしやすくなります。
指しゃぶりや、鼻づまりによる口呼吸で引き起こされることも多いので、小さいうちから注意が必要です。5歳以降も指しゃぶりが続いている場合はやめるようにした方がよいでしょう。
口唇の閉鎖ができるところまで、早いうちに治療した方がよい不正咬合です。
- 5 「過蓋咬合」
咬み合わせが深すぎるという症状です。上下前歯のかぶさる量は、2〜3ミリが正常ですが、これが5ミリを越えると「深すぎる」ということになります。 噛んだ時に下の前歯がほとんど隠れてしまう位のかぶさりです。
実は、この不正咬合は、気づかれにくいものの一つなのですが、治療する立場からは、早く見つけて対処したい不正咬合です。
前歯のかぶさりが深すぎると、下顎の前後左右への動きが制限されて、奥歯が臼を挽くように食物をすりつぶす動作が十分できなくなります。 また、下の前歯が上の前歯の裏側の歯肉を咬んでしまい、歯茎を痛めることもしばしばあります。食事中、咬むと前歯が痛い場合、過蓋咬合を疑う必要があります。
治療法は、奥歯をなるべく伸ばすことで前歯のかぶさりを少なくする方法と、前歯をへこませて(歯茎の中に押し込んで)治す方法があります。 成長中の場合は、前者の方法が可能ですが、成人では後者の方法に頼らざるを得ず、歯への負担が大きく、難しい治療になります。
- 6 「外傷性咬合」
咬むたびに歯に異常な力がかかり、動揺や歯肉退縮を生じる咬み合わせです。早く改善しないと、歯肉退縮が進行し、歯の周囲の骨も含めて歯を支える組織が大きな損傷を受けます。
代表的な症状は、前歯が数本反対咬合(下あごの歯が上あごの歯より前に出ている咬み合わせ)で、かむたびに下顎前歯を前方に押し出す強い力がかかると、動揺が生じ、ついで歯を支えている歯槽骨の唇側が吸収して下がり、連動して歯肉も退縮してしまいます。その歯だけ長くなったように見えます。
前歯に限らず、臼歯でも歯並びや咬み合わせの不具合から、歯に斜めに力が掛かると、動揺や歯肉退縮など、前歯と同様、歯周組織の損傷が生じます。臼歯は本来、中心軸と同じ方向に力が掛かる場合には、強い力に耐えられますが、横方向の力には非常に弱いと言われています。
一度退縮した歯肉は元に戻りづらいので、できるだけ早く、このような外傷性咬合の状態を解消して、症状の進行を止める必要があります。 歯の移動が必要な場合もありますので、歯科医院で診てもらうことをお勧めします。

- 不正咬合の原因にはこんなものも

- 1 舌の影響
矯正治療の術後の安定を左右する大きな要素に、舌や唇など筋肉の影響があります。舌も唇も力は弱そうにみえますが、日に何百回何千回と歯に圧力を掛けますので、その影響は大きなものになります。 筋肉からの圧力バランスが取れていない場所に歯を位置づけると、なかなか安定しません。
舌を前方に突き出す癖のある人は、それを治して、舌で前歯を押さないようにしておかないと、矯正装置で前歯を後退させても、その位置で安定せず、また前歯が出てしまいます。 唇の力が弱い場合も、相対的に舌圧が強くなってしまうので、同様の結果になります。
鼻が詰まっていることが多く、口で息をする癖がある人は、口を閉じていないので唇の力(口輪筋)がゆるみがちです。また、舌も口の中で下がり、前方に出る傾向が強くなります。 その結果、開咬や上顎前突などの不正咬合を引き起こしやすいと言われています。舌や唇のトレーニングはもちろんですが、耳鼻科での治療が必要な場合もあります。
- 2 鼻づまりと開咬
開咬とは、上下の歯を咬み合わせた時、一部の歯が咬み合わず離れている状態を言います。前歯に出ることが多いですが、横の歯に生じる場合や、最後方の歯以外全部が開咬の場合もあります。 開咬を引き起こす最も大きな原因に「鼻づまり」をはじめとする鼻気道障害が挙げられます。
鼻炎や扁桃肥大(へんとうひだい)により鼻気道が狭められると、呼吸を確保する為に口呼吸を強いられます。 本来口の中の天井に接している舌は下降し前方に転位、口は常時開いていることになります。その結果下顎骨は後下方に転位し、縦長の顔になる傾向があります。
それに対応して臼歯が伸び出し、前歯は開咬になってきます。 また、上顎臼歯部の内側から舌の圧が掛からなくなるので、上顎歯列が狭まり、上下の歯列幅不調和をきたして、咬合不安定、臼歯部反対咬合などを招きます。 上顎歯列の叢生(八重歯、乱杭歯)を生じることもあります。
根本治療は鼻気道障害を除去することですが、十歳以前に行うと、術後の安定性がよいと言われています。 耳鼻科的な治療の後、矯正歯科の治療をするのが理想的です。歯の移動の他、舌や口唇のトレーニングを併用します。
- 3 親知らずの影響
親知らず(第三大臼歯)が生えてくる時期に、不正咬合の新たな発症や再発が生じることがあります。
代表的な症状は、叢生(凸凹の歯並び)と、前歯部の開咬(歯が上下的に離れてしまい、咬み合わない状態)です。 叢生については、必ずしも親知らずが原因ではなく、自然に誰にでも起きる増齢的変化の場合も多いと思われます。
しかし、「ディスクレパンシィ」と言って、歯が大きく、あごが小さくて歯の生える場所が足りない状態ですと、親知らずの萌出でさらに場所が足りなくなり、叢生が生じる場合があります。
親知らずの生えてくる方向が、一本前の第二大臼歯を斜めに押すような向きですと、第二大臼歯も前方に傾斜し、後方が伸び出した形になり、開咬の原因になります。
ただし、咬む力がある程度強いと、歯は伸び出さないので、開咬にはならないようです。
親知らずが歯茎の中で第二大臼歯の歯根に接触し、吸収を起こした例もありますので、高校生くらいの時期に(親が知っているうちに)、親知らずの位置や方向をレントゲンなどで確認した方がよいでしょう。

- 治療開始時期

「いつ頃から始めるのがよいか?」
お子様の矯正治療を始める時期については、まず主な症状で大まかな時期を決めるのがよいでしょう。
見つけたらなるべく早く治した方がよい症状には、

①外傷性咬合(咬むことで歯がぐらぐらしてしまう咬み合わせ)
②交叉咬合(片側の反対咬合、顔の歪みを伴う)
③反対咬合(受け口)
④開咬(前歯が咬み合わない)
⑤著しい上顎前突(出っ歯)
⑥過蓋咬合(歯と歯茎が咬み合うような深い咬み合わせ)


があります。これらの不正咬合は、放置すると歯や歯周組織に大きな傷害を与えたり、より重篤な症状になるおそれがあります。

永久歯列になってからの治療でかまわない症状には叢生(凸凹の歯並び)があります。
しかし、叢生は他の不正咬合を合併していることも多いので、鑑別診断が必要です。
また、小学校低学年であれば、歯列の拡大で叢生が解消できるケースもありますから、歯を抜かずに治療できる可能性が増えます。

矯正治療の開始時期を決めるもう一つの要素に、顔面骨格の成長の問題があります。
成長が活発な時期に治療する方がよい場合と、成長が終わってから治療する方がよい場合があります。
成長が活発な時期を選んで治療するのは次のような場合です。

①反対咬合を治すために上顎骨を前方へ引っ張り出す場合(12歳位まで)
②上顎前突(出っ歯)を治すために、上顎骨の成長を抑制したり、下顎骨の前方成長を促進する場合(15歳位まで)
③歯列を拡大して叢生(凸凹の歯並び)を治す場合(10歳位まで)。


成長期が過ぎてから治療する方がよいのは、骨格性の著しい下顎前突で、上顎骨の前方成長促進を行わない場合です。
中高生の下顎骨の前方成長が活発な時期にその成長を抑制することは困難と考えられていますので、成長が終了するまで待って、出来上がった顔面骨格にあわせて矯正治療します。 通常、高校生以降になります。 一人ひとり成長のタイミングは異なりますので、個人の成長を、身長の伸び具合や手の骨の化骨などを参考に、顔面骨格を規格撮影するレントゲンで確認し、適切な時期を選んで治療することが必要です。 このほかにも、受験や部活などに忙しい時期は避けた方がよいでしょう。 矯正治療中は、装置の異物感、調節時の痛みなどからストレスもありますし、歯磨きに努力が要ります。 装置を付けたり、ゴムを掛けたりする必要のある場合もありますので、治療に対してある程度集中できる時期にした方がよいと思います。

- 第一期治療と第二期治療

子どもの矯正治療には二つの時期があります。
7歳前後の永久前歯が生えた時期(第一期治療または早期治療)と、13歳前後の永久歯列が完成した時期(第二期治療または本格治療)です。

第一期治療では、顎骨の成長を利用した治療や、成長に悪影響を及ぼしそうな原因の除去が主な内容です。
前歯の反対咬合、開咬、交叉咬合(奥歯の反対咬合)、著しい上顎前突などが対象になります。簡単な装置を使って歯列の拡大や一部の歯の移動をします。
顎外装置(顔や頭に着ける装置)や口の中に入れる装置を使って顎骨の成長をコントロールします。
また、指しゃぶりや舌癖(突き出し、低位など)がある場合は、それを治す練習をします。

第二期治療は、歯を細かく動かして歯列全体の咬合を整える治療です。
歯を並べるための場所が足りない場合は一部の永久歯を抜いて数を減らすこともあります。通常ブラケットという固定式の器具を一本一本の歯に付けます。
第一期治療が十分な効果を上げていれば、第二期治療は簡単になり、要らない場合もあります。

- 早期治療のメリット

矯正歯科治療を子どもの時から始めるメリットは、第一に成長を利用できることでしょう。 外科矯正やインプラント矯正などの技術も発達したので、大人になってからの治療でもほとんどの症状は治せるようになりましたが、 一部の例外を除いて、矯正歯科治療は子どもの時から始めた方がよいと思います。それは、顔面骨格の成長を利用して症状の改善を図ることができるからです。

下顎骨の成長促進あるいは上顎骨の前方成長抑制による上顎前突(出っ歯)の治療、上顎骨の前方成長促進による反対咬合(受け口)の治療がその例です。
あごの成長した分だけ歯の移動量を減らすことができるので、治療期間の短縮、歯や歯槽骨損傷の低減につながります。
また、歯並びの周囲の筋肉組織もともに成長してゆくため、筋圧による後戻りが減少し、術後の安定性向上にもつながります。

子どもの時期は骨が活発に作り変わっているので、歯の移動はスムースに進み、治療期間は短くなります。 また、あごの拡大もできるので抜歯治療の可能性を減らすこともできます。ご本人のモチベーションさえ得られれば、早期治療は多くの利点があると思います。

- 動的治療と保定治療

矯正歯科治療の内容には二種類あります。
歯を動かして歯並びや咬み合わせを治している「動的治療」と、治った状態を落ち着かせる「保定治療」に分けられます。

通常、2〜3年とされる治療期間は「動的治療」の期間で、それに加えて2〜3年の「保定治療」期間が必要です。
通院間隔は動的治療中が月に一回、一方保定治療中は3〜6か月に一回程度になります。
保定治療は、歯の位置を安定させるために必ず必要です。
歯の移動が終わった直後は歯と歯槽骨(歯を支える骨)との間に広い隙間が開いたままのため、小さな力でも歯の位置が変わってしまいますし、歯と骨とをつなぐ歯根膜繊維の緊張度が均一でないため、緊張度の強い方に引っ張り戻されてしまう傾向があります。
また、歯を大きく動かした場合には、歯の周りの唇や頬、舌などの筋肉が新しい歯の位置に十分適応していないので、歯を元の位置に動かす圧力として作用してしまいます。
これも歯の位置を変える原因になります。
従って、歯の移動が終わってから最低2〜3年の間、歯槽骨が歯根をしっかり支えるようになるまで、また筋肉が歯の位置に適応するまで、歯の位置を固定する装置を使いながら待つ必要があるのです。

- 矯正歯科治療のための抜歯

矯正歯科治療をするために健康な永久歯を抜く場合もあります。
それは、歯を並べるためのスペースをつくるのが目的です。
虫歯でもない健康な歯を抜くことには、誰でも抵抗があるものです。
矯正歯科医もできれば歯を抜かずに不正咬合を治したいと考えています。

しかし、あごが小さかったり、あごに比べて歯が大きかったりすると、歯をきれいに並べることができません。そのためのスペースを作るのが抜歯という手段です。
どの歯を何本抜くかは、それぞれの状況によって異なりますが、咀嚼(そしゃく)に最も影響の少ないと考えられている歯(多くは小臼歯)を上下左右一本ずつ、計四本抜くことが多いのです。
とは言え、小学校低学年から治療を始めると、あごの成長発育を大いに利用できるので、抜歯を回避できる可能性が増えてきます。

下あごをどれだけ拡大できるかによりますが、小さいうちから治療を始めるメリットはあります。ただし、拡大などの早期治療をしたとしても、抜歯をする場合もあり得ます。
大切なのは、歯を抜く抜かないではなく、将来においても安定したよい咬み合わせやきれいな歯並びが実現できるかどうかなのです。

- 日常生活への影響

矯正治療を始めると日常生活にはどのような影響が出るのでしょうか?
装置を始めて着けた直後には、歯が痛くて咬めない、歯が咬み合わない、装置がこすれて頬の裏や舌が痛い、しゃべりにくい、飲み込みにくいという症状が出ます。 しかし、初めの1〜2週間を乗り切れば、その後は慣れてきますから日常生活に大きな不自由はなくなると思います。
- 1 咬んだ時の痛み
歯が痛くなるのは、歯の移動初期に起きる歯肉内の反応のためなので、痛みの程度は様々ですが、基本的には避けることはできません。
主に食事をしたり、咬みしめた時に出ますが、2〜3日で収まりますので、その間は軟らかい食べ物で我慢してください。
- 2 異物感、発音
装置の異物感やこすれる痛み、しゃべりにくさは、1〜2週間くらい掛かりますが、徐々に慣れて改善します。
自分で着脱できる装置の方が大きいので、発音への影響は大きいようです。
- 3 見た目
歯の前面に装置が見えることに対しては、透明や白色の目立たないブラケットを使ったり、歯の裏側にブラケットを着けることで対処することができます。
- 4 歯磨き
矯正装置を使っている間は、歯の掃除を丁寧にしないと虫歯や、歯肉炎になることもあります。 時間を掛けて、きちんと汚れを取り除くのには手間が掛かりますし、負担になるかもしれません。
毎食後十分な清掃をするのは難しい場合もあると思いますが、寝る前にしっかり掃除してもらえば危険度はかなり低下します。
虫歯になりやすさの程度(唾液検査でわかります)に合わせて対応することが必要です。
- 5 楽器の吹奏
矯正装置を着けた状態で管楽器を演奏する場合、どの楽器でも装置を着けない状態と同じようには吹けないのが実際です。
ただし、管楽器も吹くときの唇と楽器との位置関係は様々で、影響には差があるようです。 比較的影響が少ないのは、フルートのような木管楽器やトランペットなどマウスピースの大きな金管楽器です。
次に影響の出る楽器が、シングルリードのクラリネットやサキソフォンです。さらに影響の大きいのはオーボエなどのリードが細い楽器のようです。
いずれにしても、矯正装置を着けた状態での演奏に慣れるまでは少し苦労するかもしれませんが、吹けなくなるわけではありません。
一方、楽器のマウスピースをくわえたり、吹奏のため舌で前歯を押すような動きを長時間続けると矯正治療に悪い影響が出る場合もあります。上顎前突(出っ歯)や開咬です。

- 顎関節症について

あごの関節がガクガクいったり(顎関節雑音)、口を開け閉めする時痛みが出たり、口を大きく開けられないというのが顎関節症の三大症状です。
原因は、あごの周りの筋肉障害(疲労、こわばり)、関節円板という関節内の軟骨のずれや変形です。

くいしばりや歯ぎしり、片噛み、頬杖、悪い姿勢、うつぶせ寝、顎の打撲、大開口による亜脱臼、咬み合わせの不正、精神的ストレスなどが引き起こします。
急性の場合は関節部を冷やしたり、鎮痛剤、消炎剤を服用し1〜2週間安静にすると大部分は治ります。足のねんざのようなものです。

徐々に症状が出てきた場合は、咬み合わせも含めてよく調べた上で、スプリントと言われる咬み合わせを安静にする器具を、口の中に装着するのも一つの治療法です。
歯を削るなど、元に戻せない処置は最後にするべきです。
口を大きく開け閉めするエクササイズも有効と言われています。

咬み合わせが顎関節症の原因になることは少ないため、矯正治療や、歯にかぶせものをする治療が有効なのは限られた場合のようです。
雑音のある人は成人の半数以上いると言われています。
肘や膝をはじめとする体内の関節同様、あごの関節も長年使っていると、関節内部に変性が起きるため、様々な雑音が生ずるのです。
痛みなども一過性のことが多いので、あまり心配は要りません。

- 筋機能療法(MFT)について

日常生活の中で、飲み込む時やしゃべる時に舌を突き出す癖を「舌癖」といいます。
舌癖のある人は、舌が口の中で低い位置や前方にあり、歯を押しています。
一日に何度も飲み込む動作をしますが、その度に、舌で歯を押していることになります。
そのため、出っ歯になったり、あるいは反対咬合(受け口)になったり、歯と歯の間に隙間が開いたり(空隙歯列)、上下の歯が噛み合わない開咬という不正咬合になる場合があります。
また、話をするときにも舌を前へ突き出してしまい、舌足らずな発音になることもあります。
舌小帯短縮(写真参照)が原因していることもあります。
また、口をポカーンと「口呼吸」をしていると、唇で前歯を外側から抑える力が不足してしまい、その結果前歯が出っ張ることになります。

このように歯の位置や咬み合わせは、舌や唇など歯列の周りの筋肉の影響を強く受けています。舌や唇の異常は矯正治療の進行の妨げにもなります。これらの筋組織の異常を改善するためには特別なトレーニング方法があり、筋機能療法(MFT)と呼ばれています。
内容は、正しい舌の位置や動かし方、正しい飲み込み方を練習したり、口唇力の強化をするものです。

普段は無意識のうちに行っていることなので、意識的に繰り返し練習する必要があります。
当院では研修を受けた歯科衛生士がトレーニング指導に当たっています。

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